「新銀行東京は、08年3月期に1000億円を超す累積損失を計上した。」
http://news.livedoor.com/article/detail/3959466/
とありますが、
「累積損失1000億円」とは、簿記のイメージで理解すると、どういった感じですか?
仕分けベースで教えてください。
http://www.smbc.co.jp/aboutus/profile/koukoku/pdf/2003.pdf
三井住友銀行の財務諸表です。負債の部に預金があって、当座預金・普通預金・定期預金などが並んでいます。あれ、預金は資産に計上されて借方に上がるはずなのに、おかしいなと気付かれたと思います。これは銀行を主体として作成していますので、会社が銀行に普通預金や定期預金を預けることは、銀行から見ますと負債となります。
現金 **/普通預金 **
銀行は現金を預かって負債として普通預金勘定で処理します。したがって、商品販売業や製造業とは異なった仕訳をします。このように銀行業で使われている簿記を銀行簿記と言います。商品販売業では商品の仕入・販売を商業簿記で記帳します。製造業では製造に伴う取引を工業簿記で外部への販売は商業簿記で記帳します。銀行は金銭(現金)が商品・製品に該当しますので一般事業会社とは処理が違っていることを押さえてください。
銀行の主要な収益は会社・個人事業主などに融資を行ない、その利息を受け取ることです。事業資金以外にも個人向けの住宅ローン・教育ローンなどもあります。
理解するのに分かり易いように単純化して説明したいと思います。
銀行が会社に融資をしました。一般事業会社で使われている分かり易い勘定科目では貸付金・貸出金になります。
貸出金 **/現金 **
上記の貸借対照表では、貸出金の内訳として手形貸付・証書貸付などが上がっています。仕訳の勘定科目は次のように細分化して処理しています。
手形貸付 **/現金 **
証書貸付 **/現金 **
貸出金の元本と利息を受け取りました。受取利息は一般事業会社の場合です。
現金 **/貸出金 **
/受取利息 **
細分化した仕訳ですと次のようになります。
現金 **/手形貸付 **
/受取利息 **
上記の損益計算書では受取利息は貸出金利息として上がっています。
現金 **/手形貸付 **
/貸出金利息 **
貸倒の心配が無い優良会社を選別して融資をしていましたら、順調に元金と貸出金利息を回収することができます。
単純化しますが、損益計算書は次のようになります。
収益(主として)
貸出金利息 **
費用(資金調達費用)
預金利息 **
営業経費 **
-----------------------
経常利益 **
ここでの費用(資金調達費用)とは会社・預金者が銀行に普通預金や定期預金を預け入れた金額に対する利息のことです。銀行業に特有の銀行簿記なので、預金利息は費用となります。
銀行は会社・預金者から幅広く預かった資金を事業者・住宅ローンなどに貸し出して、その利ザヤで商売をしているわけです。だから会社・預金者から預かった資金に対する利息は預金利息という費用となります。
上記の営業経費には、役員・従業員への役員報酬・給与・賞与や店舗運営に伴う諸経費(電話代・コンピュータ維持費・建物減価償却費など)が含まれます。
繰り返しになりますけど、優良会社に資金を融資して順調に元金と貸出金利息を回収でき、会社・預金者に低金利で利息を支払い、銀行の店舗運営に伴う人件費・諸経費が利ザヤ内に収まっていれば利益が出ます。実際は、たくさんの有価証券を保有していますので評価損が発生したり、固定資産の売却損益、投資に伴う損失、振込手数料収入、貸出金以外の諸条件が複雑に加算・減算されますが、個々の具体例を挙げていきますとキリがありませんので説明の便宜上単純化しています。
http://www.sgt.jp/about/disclosure/pdf2007/070622.pdf
では、新銀行東京はどうだったかという問題に入っていきます。明らかに資金の回収が見込めない会社にホイホイと融資を行ない元本が回収できませんでした。与信管理が不十分で杜撰な融資でした。
「結果として想定をはるかに大きく超える不良債権が発生しました」と説明されていますように、巨額の不良債権が発生したのです。不良債権の処理は、貸倒引当金繰入として処理します。
貸倒引当金繰入額 **/貸倒引当金 **
(貸倒引当金繰入損)
10ページに新銀行東京の損益計算書が掲載されています。
若干、数値を単純化しますと次のようになります。
収益 116億円
費用 518億円
---------------------
経常損失 402億円
金額として大きいのは、278億円もの貸倒引当金繰入額です。収益の2倍以上もの貸倒を引き当てていることになります。言い換えますと、資金をジャブジャブ貸し出す一方で元金の回収が出来なくなったことを示しています。
http://www.nouzeikyokai.or.jp/yomimono/news/img/0607/03.pdf
損益計算書で当期純損失が547億円生じています。この金額は株主資本等変動計算書を通じて貸借対照表に反映されます。ここでの記載例の繰越利益剰余金の欄を参照してください。前期末残高に当期純損失(ここでは当期純利益)を加算したのが、当期末残高となります。
http://www.sgt.jp/about/disclosure/pdf2006/060731_dis.pdf
32ページをご参照ください。平成18年3月31日の当期未処理損失の金額が30,201百万円と表示されています。旧商法と会社法で表記方法が異なっているのですが、この30,201百万円に翌期の当期純損失54,715百万円を加算することで84,916百万円が算出されます。
http://www.sgt.jp/about/disclosure/pdf2007/070622.pdf
前期末
平成18年3月31日
当期未処理損失 302億100万円
平成19年3月31日の損益計算書(上記の11ページ)
当期純損失 547億1500万円
合算します。849億1600万円
この金額が貸借対照表の繰越利益剰余金に反映されています。
http://www.sgt.jp/about/disclosure/pdf2008/080630.pdf
前期末
平成19年3月31日
849億1600万円
平成20年3月31日の損益計算書(上記の2ページ)
当期純損失 167億3100万円
合算します。1016億4700万円
この金額が貸借対照表の繰越利益剰余金に反映されています。利益剰余金も同額です。
1016億4800万円
1百万円合わないのは、表示する上で百万円未満を切り捨てているためです。質問文の1000億円を超す累積損失とは、この繰越利益剰余金の金額を指しています。このように毎年、損失が発生したことによる累積の金額のことです。
http://www.sgt.jp/about/disclosure/
上記のリンク元です。
上記の回答で疑問点や分かり難い点がございましたら、質問者さんの返信を利用して書いて頂ければと思います。その際、オプションを「回答受付中にコメント・トラックバックを表示する」に変更して下さいますと、容易にフォローすることができますので、ご検討をお願いいたします。
詳しくありがとうございます!