「天国でも地獄でも長い箸(またはスプーン)で食事をさせられる」という話の原典(おおもとの出どころとなった本)を探しています。


ずいぶん昔に別の質問サイト(教えてgoo)で訊ねたのですが、残念ながら納得できる回答を得られませんでした。
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/452565.html

インターネットで検索をかけると、法話、講話、説教、自己啓発セミナー、TV番組、「人から聞いたいい話」など、数多くヒットしますが、原典を明示していないものは除外してください。

また、孔子『論語』/ダンテ『神曲』/鎌田茂雄『華厳の思想』/『こころのチキンスープ』/青柳田鶴子『ほとけの子』/『はじめてのお釈迦さまのお話』は除外してください。『こころのチキンスープ』以下のように、執筆年が新しく、オリジナルではないだろうと類推されるものはなるべく除いてください。長い箸の話を“最初に”記載した文献を知りたいのです。
よろしくお願いいたします。

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  • 終了:2011/04/22 16:30:03
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ベストアンサー

id:meefla No.2

回答回数997ベストアンサー獲得回数472

ポイント35pt

長文になりますので、まず kanan5100 さんのご回答に対するスタンスを述べておきます。

「1970年にユダヤ人の精神科医アーヴィン・ヤーロムが著書に書き、それがきっかけで世界に知られるようになったのではないか」という点に対しては、異論ありません。

Temple Sinai Congregation of Toronto、つまりユダヤ教の教会のサイトでさえ、Our Community のページで "The Wisdom of Holy Shift" というタイトルのもとでこの話を記載する際に、出典にアーヴィン・ヤーロムの本を挙げている事からも、『集団精神療法の理論と実践』の影響力がうかがわれます。

(逆に、ユダヤ教の教会でも "an old Hasidic story" 「ユダヤ教敬虔主義の古い説話」の原典を明示できない、とも言えるかもしれません)

また、"The Rabbi's Bible" を書いた Solomon Simon も、Wikipedia を読んだ限りでは立派な人のようですので、"The Rabbi's Bible" の記述も信頼できるものと考えます。


しかし、「もともとはユダヤ教の説話で」という部分には検討の余地がある気がします。

天国と地獄を抜きにすれば、長いスプーンの話は昔から世界各地に似た話があるそうです。

例えば、The long handled spoon - morgan schatz blackrose で紹介されている、トルコの民話です。

これは「王様が出した難題を、賢い住人が解いた」という民話によくあるパターンで、天国も地獄も出てきません。

Texas Tech University の Archive of Turkish Oral Narrative •• Türk Öykürleri Sandığı にある The City of Clever Men (PDF) によれば、1962年に聞き取りをしたお話しのようですので、昔からある民話で間違いないと思います。


前置きが長くなりましたが、私の調べた範囲でこの寓話が載っている最も古い文献は、1948年に発行された Unity [devoted to practical Christianity] という雑誌の第109巻5号 の49ページです。

デジタル化されたのが Oct 27, 2010 ですから、kanan5100 さんが調査された2009年には Google books には存在していなかったでしょう。

残念ながら部分プレビューなので、検索キーワードを少しずつ変えていくという手法を取っても全体像がなかなかつかめませんが、私が読み取った範囲で再構成したものを引用して、拙訳を加えます。

...Now is the time to be aware, to have our heart lighted with tenderness and acceptance, to know that the kingdom of heaven exists to be lived in. Now.

The story has been told of a group of persons seated about a table filled with food. One hand of each person was tied behind his back. To his other hand was tied a long-handled spoon. The handle was so long that the individual could not possibly convey any of the plentiful supply of food to his mouth. Yet the persons were well-nourished. An observer wondered how this could be. One of the persons answered: "Oh, it is easy. You see, we feed each other."

「...今こそ目覚めの時。我々の心を優しさと受容で照らす時。住むべき天の王国が存在すると知るべき時。今こそ。

食べ物でいっぱいのテーブルに座った一群の人たちの話だ。彼らの片手は後ろ手に縛られていた。もうひとつの手には、柄の長いスプーンが縛り付けられていた。柄はとても長く、食べ物を口に運ぶことはできない。それでも彼らの栄養状態は良好だった。見学者は何故だろうと思った。人々の一人が答えた。『簡単さ。お互いに食べ物を与えあっているんだ』」


全文は48ページ以前から始まるようで、部分プレビューからではタイトルも作者もわかりません。

"UNITY FOR NOVEMBER 1948" とありますので、1948年11月刊行でしょうか。


"The Rabbi's Bible" とは逆に、ここには地獄の話は出てきません。

それでもこの話がご質問の「天国でも地獄でも長いスプーンで食事をさせられる」という話の原典(の一つ)と考えるのには理由があります。

Unity の発行元である Unity School of Christianity はキリスト教の一派ですが、宗派の分類としては ニューソート になります。

天国も地獄もセッティングは同じ、違いは住人の心の持ちよう、という古典的宗教とは相容れない発想の話も、ニューソートが原典と考えると了解できます。

また、ユダヤ教においてニューソートから影響を受けた Jewish Science という運動もあったようですので、"The Rabbi's Bible" の地獄の話と "Unity" の天国の話が合体して現在の形になった、という可能性もないとは言えないでしょう。

さらに、自己啓発セミナーの歴史 に記述されているように、ニューソートと自己啓発セミナーは深い関連があります。

libros さんが調査された時に自己啓発セミナーがヒットしたのも、ニューソートからの流れとして解釈できるような気がします。

(新興宗教つながりで、巫女から教祖になった「エースをねらえ!」の作者、山本鈴美香 まで持っていけるかとも思いましたが、さすがにそれは無理があるかと。ちなみに、私がこの話を最初に読んだのは「エースをねらえ!」であると記憶しています。永平寺で修行していた桂コーチが出てくる所から「第二部」で、連載時期は1978年~1980年になりますが、おぼろげな記憶では第二部の後半です)


なお、Unity School of Christianity の青年部 Great Lakes Region Youth of UnityLesson Library には、The Beatitudes (PDF) という文書があります。

Beatitudes は Wikipedia 日本語版だと 真福九端 になりますが、山上の垂訓 の方がわかりやすいかもしれません。

PDF の10ページには "Blessed are the merciful: for they shall obtain mercy"(あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。)に関する記述がありますが、その中に "Spoon Activity" という項目があります。

この垂訓の意味を考えるため、実際に長いスプーンを作って体験してみる、というアクティビティのようです。


以上、ご参考になれば幸いです。

id:libros

詳細な回答をありがとうございます。

じっくり読ませて頂きます。

実際に長いスプーンを体験する活動が面白そうです。

2011/04/18 16:08:33

その他の回答1件)

id:kanan5100 No.1

回答回数1469ベストアンサー獲得回数275

ポイント35pt

http://psychodoc.eek.jp/diary/20091109.html

これについては以前調べたことがあり、私としては「もともとはユダヤ教の説話で、1970年にユダヤ人の精神科医アーヴィン・ヤーロムが著書に書き、それがきっかけで世界に知られるようになったのではないか」と結論を出しています。

 

私の調べた範囲では、この寓話が載っているもっとも古い文献は、1966年に出版されたユダヤ教徒向けの聖書(もちろん旧約)の注釈書"The Rabbi's Bible"です。

http://books.google.com/books?id=71DmAUDTy9wC&pg=PA127&dq=long-h...

id:libros

素早く、かつ素晴らしい内容の回答をありがとうございます。

じっくり読ませて頂きます。

それにしても、これほど詳細に記述されたサイトが、普通の検索(Google)でヒットしないのは何故でしょう。

2011/04/15 16:51:30
id:meefla No.2

回答回数997ベストアンサー獲得回数472ここでベストアンサー

ポイント35pt

長文になりますので、まず kanan5100 さんのご回答に対するスタンスを述べておきます。

「1970年にユダヤ人の精神科医アーヴィン・ヤーロムが著書に書き、それがきっかけで世界に知られるようになったのではないか」という点に対しては、異論ありません。

Temple Sinai Congregation of Toronto、つまりユダヤ教の教会のサイトでさえ、Our Community のページで "The Wisdom of Holy Shift" というタイトルのもとでこの話を記載する際に、出典にアーヴィン・ヤーロムの本を挙げている事からも、『集団精神療法の理論と実践』の影響力がうかがわれます。

(逆に、ユダヤ教の教会でも "an old Hasidic story" 「ユダヤ教敬虔主義の古い説話」の原典を明示できない、とも言えるかもしれません)

また、"The Rabbi's Bible" を書いた Solomon Simon も、Wikipedia を読んだ限りでは立派な人のようですので、"The Rabbi's Bible" の記述も信頼できるものと考えます。


しかし、「もともとはユダヤ教の説話で」という部分には検討の余地がある気がします。

天国と地獄を抜きにすれば、長いスプーンの話は昔から世界各地に似た話があるそうです。

例えば、The long handled spoon - morgan schatz blackrose で紹介されている、トルコの民話です。

これは「王様が出した難題を、賢い住人が解いた」という民話によくあるパターンで、天国も地獄も出てきません。

Texas Tech University の Archive of Turkish Oral Narrative •• Türk Öykürleri Sandığı にある The City of Clever Men (PDF) によれば、1962年に聞き取りをしたお話しのようですので、昔からある民話で間違いないと思います。


前置きが長くなりましたが、私の調べた範囲でこの寓話が載っている最も古い文献は、1948年に発行された Unity [devoted to practical Christianity] という雑誌の第109巻5号 の49ページです。

デジタル化されたのが Oct 27, 2010 ですから、kanan5100 さんが調査された2009年には Google books には存在していなかったでしょう。

残念ながら部分プレビューなので、検索キーワードを少しずつ変えていくという手法を取っても全体像がなかなかつかめませんが、私が読み取った範囲で再構成したものを引用して、拙訳を加えます。

...Now is the time to be aware, to have our heart lighted with tenderness and acceptance, to know that the kingdom of heaven exists to be lived in. Now.

The story has been told of a group of persons seated about a table filled with food. One hand of each person was tied behind his back. To his other hand was tied a long-handled spoon. The handle was so long that the individual could not possibly convey any of the plentiful supply of food to his mouth. Yet the persons were well-nourished. An observer wondered how this could be. One of the persons answered: "Oh, it is easy. You see, we feed each other."

「...今こそ目覚めの時。我々の心を優しさと受容で照らす時。住むべき天の王国が存在すると知るべき時。今こそ。

食べ物でいっぱいのテーブルに座った一群の人たちの話だ。彼らの片手は後ろ手に縛られていた。もうひとつの手には、柄の長いスプーンが縛り付けられていた。柄はとても長く、食べ物を口に運ぶことはできない。それでも彼らの栄養状態は良好だった。見学者は何故だろうと思った。人々の一人が答えた。『簡単さ。お互いに食べ物を与えあっているんだ』」


全文は48ページ以前から始まるようで、部分プレビューからではタイトルも作者もわかりません。

"UNITY FOR NOVEMBER 1948" とありますので、1948年11月刊行でしょうか。


"The Rabbi's Bible" とは逆に、ここには地獄の話は出てきません。

それでもこの話がご質問の「天国でも地獄でも長いスプーンで食事をさせられる」という話の原典(の一つ)と考えるのには理由があります。

Unity の発行元である Unity School of Christianity はキリスト教の一派ですが、宗派の分類としては ニューソート になります。

天国も地獄もセッティングは同じ、違いは住人の心の持ちよう、という古典的宗教とは相容れない発想の話も、ニューソートが原典と考えると了解できます。

また、ユダヤ教においてニューソートから影響を受けた Jewish Science という運動もあったようですので、"The Rabbi's Bible" の地獄の話と "Unity" の天国の話が合体して現在の形になった、という可能性もないとは言えないでしょう。

さらに、自己啓発セミナーの歴史 に記述されているように、ニューソートと自己啓発セミナーは深い関連があります。

libros さんが調査された時に自己啓発セミナーがヒットしたのも、ニューソートからの流れとして解釈できるような気がします。

(新興宗教つながりで、巫女から教祖になった「エースをねらえ!」の作者、山本鈴美香 まで持っていけるかとも思いましたが、さすがにそれは無理があるかと。ちなみに、私がこの話を最初に読んだのは「エースをねらえ!」であると記憶しています。永平寺で修行していた桂コーチが出てくる所から「第二部」で、連載時期は1978年~1980年になりますが、おぼろげな記憶では第二部の後半です)


なお、Unity School of Christianity の青年部 Great Lakes Region Youth of UnityLesson Library には、The Beatitudes (PDF) という文書があります。

Beatitudes は Wikipedia 日本語版だと 真福九端 になりますが、山上の垂訓 の方がわかりやすいかもしれません。

PDF の10ページには "Blessed are the merciful: for they shall obtain mercy"(あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。)に関する記述がありますが、その中に "Spoon Activity" という項目があります。

この垂訓の意味を考えるため、実際に長いスプーンを作って体験してみる、というアクティビティのようです。


以上、ご参考になれば幸いです。

id:libros

詳細な回答をありがとうございます。

じっくり読ませて頂きます。

実際に長いスプーンを体験する活動が面白そうです。

2011/04/18 16:08:33
  • id:meefla
    kanan5100 さんのよりも古い文献を調査中ですが、調べるのに少し時間がかかります。
    ご質問はもう少し開いておいていただけるとありがたいです。
  • id:libros
    meeflaさんへ。コメントありがとうございます。
    はじめてのはてな投稿でまごまごしております(^_^;;
    質問は可能な限り開けておくつもりです。急ぎませんので、どうかじっくり取り組んでください。よろしくお願いいたします。
  • id:libros
    kanan5100さん、meeflaさん
    回答ありがとうございました。あらためてお礼申し上げます。
    もっと多くはてなポイントをつけるつもりでしたが、自動終了の後は加算できない、ということを理解していませんでした。
    実はこの質問のためのはてなポイントは、
    http://q.hatena.ne.jp/1302706922
    でGleamさんが送付してくださいました。ですから、別途ポイントを送る方法があるはずなのですが、やりかたがよくわかりません。
    失礼な結果になってしまい、申し訳ありません。
    いるか賞は可能ならばお二人ともに差し上げたかったです。
    より古い文献を挙げられたmeeflaさんに進呈させていただきます。

    それにしても、これだけ綿密に調査しても、長い箸(スプーン)の話は20世紀半ばまでしか遡れないんですね。
    六朝志怪とか千一夜物語とか(←これまるっきりテキトーに
    書いてます)もっと大昔に、原型となる話があるのでは
    ないかと想像していました。
  • id:Gleam
    https://www.hatena.ne.jp/help/point
    ポイント送信はこのページからできます。
  • id:libros
    Gleamさん、コメントありがとうございます。はてなの機能を全くわかっていないなあと、今回のことでつくづく実感しました。
    この質問のためにGleamさんからいただいたポイントを、回答者のお二人に等分に送付いたしました。kanan5100さん、meeflaさん、回答に対するポイント獲得実績には反映しなくてすみませんが、ご笑納ください。
    思いがけず質問の機会を得、ずっと抱いてきた疑問に、打てば響くように答えていただいたことに驚き、感激しています。
    重ねてお礼申し上げます。
  • id:meefla
    libros さん、ポイントご送付、ありがとうございました。
    確かに受領しました。
    また何かありましたら、よろしくお願いします。

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